最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)1093号 判決 1966年2月11日
主文
なし
理由
上告代理人樫本信雄、同浜本恒哉の上告理由第一点および第二点について。
原判決の引用する第一審判決は、上告人ら(被告ら)は、判示のように訴外乙川貞雄が被上告人相互銀行(原告)に雇傭されるにつき被上告人との間に右貞雄のための身元保証契約を締結したが、右契約の内容として、右貞雄が相互掛金契約等募集係外務員として何等金銭上の取扱いをしないことに限定されたという上告人ら主張事実がなく、かえつて、被上告人が相互銀行である関係から、右貞雄が集金事務を取扱うであろうことは当然予定し、このことを前提として前記身元保証契約が締結されたものである事実を認定したものであつて、右事実認定は右判決挙示の証拠により肯認できる。そうであれば、右貞雄の職務内容が相互掛金契約等の募集係から集金係に変つても、募集係といえども第一回の掛金の授受を行うものであり、集金係と金銭取扱の額において差異があり、損害発生の危険性において若干異なるところがあるとしても、右任務の変更はさしたる変更でなく、上告人らにおいて当初よりこのことがあることを当然予期していたところであるから、被上告人において、上告人らに対し、この事実を通知しなかつたからといつて、そのことは、右貞雄の判示不法行為により被上告人に生じた損害に関する身元保証契約上の責任およびその金額を定めるにあたつて未だ斟酌するに値しないとした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法がない。
〔関係金融機関〕大正相互銀行(被上告人)